連載小説 須佐の杜ラプソディ|第十三話「門番」

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第十三話「門番」

増長天の護衛の下、安倍晴明とともに神殿へと向かっていた津上邦明は、大きな正門の前に立つ。

立派な瓦屋根を持つ赤く塗られた門の両脇には、上半身裸になり美しい筋肉美を露わにした二人の大男が、門番のように立ちはだかっていた。

門の扉は侵入者をシャットアウトするかのように、きっちりと閉じられている。

まるで目に見えない結界が、門の周りに張り巡らされているような気がした。

先頭を歩く増長天は、その二人の門番に目くばせすると大きく頷く。

二人の男たちが手を挙げた瞬間、正門の巨大な扉が大きな音を立てながら、まるで自動ドアのようにひとりでに開きだした。

津上は、思わず門を潜ったその先を覗き見る。

津上の視界に、煌びやかに装飾された、大きな神殿の姿が飛び込んできた。

晴明は両脇に立っている大男に向かって声をかける。

門番たちはその恐ろしい表情をピクリとも変えず、晴明の声に耳を傾けていた。

「金剛力士様、お勤めご苦労様です。私は高天様よりご依頼を受け、津上様の御身をお預かりしております。どうか一緒に門を潜る許可を頂きませんでしょうか?」

晴明の問いかけに、門番たちは目を見合わせる。

先頭の増長天が口を開いた。

「高天が、また、おっちょこちょいをやらかしたのだ。一緒に招待されていた、この客人の妹君が行方不明となっておる。我々、四天王が捜索に当たっているうえ、俺もすぐに戻らなければならん。よってこの客人の案内役を、高天の代わりに安倍晴明に任せるゆえ、ここを通してやってくれ」

増長天の言葉に頷いた門番たちは、一瞬、一番後ろに立っていた津上に鋭い視線を向ける。

津上は驚いたように、びくっと体を震わせた。

増長天は、振り向きざまに晴明に話しかけた。

「本日、天帝さまのはからいにより、この神殿の中で大きな式典が執り行われる。くれぐれも粗相のないように」

「かしこまりました。で、津上様をどちらにお連れすればよろしいのですか?」

「うむ。この客人を弁天のところまで案内してやってくれ。あとのことは、弁天が全て把握しておる」

「弁天様にお会いできるのですか。久しぶりにあの美貌を拝見できるのですね」

晴明は、真っ赤な唇を少し上げながら、静かに笑みを浮かべる。

増長天は困ったように顔をしかめながら、津上の方へ顔を向けた。

「ここから先は、安倍晴明に案内を任せる。妹君は必ず探しだすゆえ、心配は無用」

津上に声をかけた増長天の体が、突然金色の光に包まれる。

増長天の姿は、煙のように一瞬で消えてしまった。

つづく


 

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