連載小説 須佐の杜ラプソディ|第六話「消えた石」

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第六話「消えた石」

「石の玉が消えた?それ、どういう意味」

刑事時代の後輩、秋山警部補の説明に、町田探偵は興味津々に耳を傾ける。

「あのですね、須佐神社の山道に祀られている高天宮という神様の祠があるんですけどね。その祠の中にご神体として祀られていたはずの石が、なぜが消えちゃってるんですよ」

「誰が気づいたの? あっ、神主さんか」

「そうです。神主さんが気づかれて、警察に通報されました。でもですね、問題はここからなんです」

「なに、もう犯人の目星がついてるとか?」

「いや、その逆です。佐世保署の刑事が関係者に聞き込みをしたところ、妙な証言が出てきましてね」

「妙な証言? なんか、嫌な予感がしてきたな。それ、秋山君が得意なオカルト系な話じゃないの?」

町田の渋い言葉に、秋山は思わず吹出した。

「わはは。ヒロさん、そっち系の話駄目ですもんね。まぁ、詳しく話すと、何時も掃除をしているおばちゃんがいるんですが、その人の話では、今までにも、何度か祠の中の石が無くなってた事があったっつて言うんですよ。神主がご祈祷するのに祠から持ち出してたのかなって思ってたけど、違ってたみたいで・・・」

「それ可笑しいでしょ。見間違いじゃないの?」

町田は不意に、昨年佐世保市で起った女子校生踪事件を思い出した。

突然女子高生三人がタクシーに乗車したまま失踪し「烏帽子岳の神隠し」と言われたこの事件は、何の手がかりもないまま一年の時が過ぎ、捜査は混迷を極めた。

その迷宮入りしそうになっていた事件を途中から引継ぎ、今現在、捜査を担当しているのが秋山警部補だった。

「ヒロさん、申し訳ないけどこの事件ね。僕が今担当している神隠し事件と同じ感じでさ、なんかヤバそうな気がするんですよ。この世の話じゃ収まらないような・・・」

「そしたら、秋山君も調査手伝ってよ。そういうのって、嫌いじゃないでしょ」

「僕は今、忙しいんですよ。これ、僕の直感なんですが、とにかく、須佐神社周辺を調べてみて下さい。何か出てくるかもですよ」


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