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烏帽子岳の孫悟空「第二十七話」

烏帽子岳の孫悟空

捜査三日目

平成二十九年九月二十二日、PM12:46

町田探偵事務所の町田浩幸所長は、事務所内に設置されている珈琲サーバーのボタンを押す。

セットした専用のプラスチック製のコップに、熱々の珈琲がつぎ込まれると、早々に自分のデスクに戻り椅子に腰かけた。

三か月前に、知り合いのリース会社に勧められ付き合いで契約したサーバーだったが、以外のほか入れたての珈琲は旨い。

器械が作るものだからと期待していなかったが、うれしい誤算だった。

昼時だが、別段お腹も減ってなかったので、食事は控えることにする。

40歳を過ぎると、すぐにお腹に肉がついてしまうので油断は禁物だ。

ストイックな性格の町田は、少しでも太ってしまうと過激にダイエットに励んでしまうので、普段から食事には気がけている。

少し腹八文目くらいがちょうど良いのだ。

町田は、事務所の壁にかけられている時計に目をやった。

12時46分。

そろそろ助手の松木から、報告の連絡が入るはずだ。

午前中に受けた指輪の依頼の仕事で、彼を佐世保市立図書館に向かわせていた。

大川内家歴代の家長の写真が掲載されている、雑誌、書籍、新聞記事など、ありとあらゆる紙面をチェックするように指示を出している。

慌てんぼうで頭の回転も遅い・・・とても褒められた助手ではないが、ホストのような甘いマスクとルックスで、女性相手の仕事には時々目を見張るような力を発揮する。

松木という青年は、使いようによっては役に立つ助手だった。

昨日、親友の秋山警備補から電話で依頼を受けた。

彼が知りたがっていた情報は二つ。

一つ目は、烏帽子岳署内から持ち出された金の指輪と大川内家の繋がり。

秋山は、この指輪が大川内家の所有物と推測している。

特に「大川内家の歴代の家長たちが、この指輪をはめていた証拠が欲しい」と話ていた。

二つ目は、金の指輪の秘密と大川内家との因果関係。

「指輪には、必ず何か隠された秘密があるはずだ。その秘密を探ってほしい」と彼は力説していた。

こちらに関しては、噂のレベルで構わないとのことだった。

秋山とは、長崎県警時代からの親友で、付き合いは長い。

自分は公安、彼は捜査一課とそれぞれ同じ部署で働くことはなかったが、頻繁に情報を流し合い交流を深めていた。

秋山は非科学的な摩訶不思議な事件を担当させると、驚くほどの捜査力を発揮するため、捜査一課で重宝されている。

しかし町田が、彼を認めているのはただ一点。

どんなに追い込まれても必ず結果を残す、その勝負強さだ。

彼はとにかくピンチに強い。

そして、柔らかい物腰で優しそうな見た目とは裏腹に、自分が直感でひらめいた事に関しては断固として譲らない、頑固な一面を持つ。

そのくせ、情にもろい面白い男だ。

飽きっぽい性格で情に流されないクールな町田にとって、秋山は完全に真逆のタイプの人間だったが、とても気の合う相手だった。

タイミングよく、カップに残っていた珈琲を飲みほすと同時に、助手の松木から電話がかかってきた。

無駄なものを一切はぶいた無機質な事務所内に、電話の着信音が鳴り響く。

使い捨てのコップをゴミ箱に投げ入れた町田は、スマートホンを手に取った。

「あっ所長、松木です。ミッション完了しました。見つけた写真は、全部コピーしましたよ」

「ご苦労様。それで、誰が指輪をはめてたの?」

「確認できたのは、聖文女子学園の初代理事長の興三郎氏から三代目理事長の睦郎氏までの三名です。三人とも政治家だったので、意外と簡単に写真が手に入りました。大川内家の歴代家長って話になると、興三郎氏から前の家長の写真は、図書館では全く手に入りませんでしたね」

「そうだろうね。まぁ、三名分も写真が見つかれば、依頼人も充分満足してくれるだろう。その写真のコピーを持って、すぐに事務所に戻ってきなさい」

「わかりました。すぐに戻ります」

町田は、松木の得意げな声に苦笑いを浮かべる。

探偵助手としてはどうかと思うが、単純で分かりやすい奴だ。

何時もなら、ここから詳しく裏を取りに行くのだが、この件についてはこれ以上首を突っ込まないほうが良い。

相手は相当な実力者で、既に警察の捜査にも圧力をかけている。

それに、今回の依頼人はスピードを求めているのだ。

町田は大川内家と金の指輪の関係についての調査はここまでとし、次の作業に取り掛かった。


「あれ、何やってるんですか?」

事務所に戻ってきた松木は、興味津々に町田のノートパソコンの画面をのぞき込む。

町田は、キーボードを叩く手を止め、松木の方へ振り向いた。

「日本中の都市伝説を集めたサイトを閲覧してるんだよ。しかし都市伝説の話って、こうやって改めて読んでみると面白いね」

「都市伝説ですか。あっ、指輪の都市伝説を探してるんですね」

「そういうこと」

町田は子供時代に戻ったように、楽しそうに白い歯を見せる。

クールな町田が時折見せるこの無邪気な笑顔のギャップは、彼の魅力をよりいっそう引き立てていた。

「どんな話が、掲載されてるんですか?」

「たとえば、これね。学生のカップルが、旅行先で廃墟となった洋館を見つける。その洋館に興味を持った二人は、ビデオカメラを回しながら建物の中に侵入するんだ。そして二人は、居間の一室で高そうな指輪を見つけるんだけどね。女性は、その指輪をこっそり持ち帰ってしまう」

「なんかその指輪、ヤバいんじゃないんですか?」

松木は顔をしかめながら、町田の話に耳を傾ける。

町田は突然声のトーンを下げながら、物語の続きを語りだした。

「二人は旅行から戻ると、女性のアパートで、旅の思い出を撮影したビデオテープを見る。ちょうど女性がその高そうな指輪をポケットにしまった瞬間、女性の声がビデオカメラの音声に入り込んでいた」

「うあぁ、どんな声が聞こえてきたんですか?」

「その指輪は私のだ!って」

「いや、それ・・・マジで洒落になりませんよ」

松木は目を白黒させながら、後ろへのけぞりかえった。

「松木君、これは有名な都市伝説の話なんだよ。たんなる作り話。でもね、こういう都市伝説の中に、ごくまれだけど真実の欠片が隠れている場合もある」

「そんなもんですか?」

「火のないところに、煙はたたないからね。秋山君は、この手の噂話を探してるんだと思う」

「捜査一課の刑事って、案外大した捜査をやってないんですね。もっと凄い科学捜査とかやってるのかと思ってました」

「まぁ、こんなところに捜査の着眼点を持ってくるのは、秋山君くらいだよ。彼の捜査は、特殊だから。他の刑事達は、もっと真面目にマニュアル通りの捜査を行っているよ」

町田は松木の問いに素っ気なく答えると、思い出したようにパソコンのキーボードを叩き出した。

松木は退屈そうに来客用のソファに寝そべりながら、スマーフォンで都市伝説のネット検索を始める。

横になっていたせいか、少し眠気が襲ってきた。

そういえば、まだ昼ご飯を食べてないな。

確か、こないだ大量に買ってきたカップラーメンが残ってた筈だ。

松木はソファから起き上がると、事務所奥にある小さなキッチンに移動した。

お湯を沸かしながら、カップ麺の蓋をあける。

三分の間、ラーメンが出来上がるのを黙って待っていると、事務所の方から声が聞こえてきた。

声の主は、どうやら町田のようだ。

名前を呼ばれたのかと思い、松木は慌ててキッチンの入り口から事務所を覗き込んだ。

町田の後ろ姿が、視界に入る。

「これだ、この話だ。金の指輪の伝説・・・これに間違いない」

町田が独り言をつぶやいている。

いつもクールな町田の声が、興奮したようにうわずっていた。

次回のお話
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二つの物語が重なり合う時、この物語は驚愕のラストを迎える。

やまの みき (著)
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