連載小説 須佐の杜ラプソディ|第二十四話「神獣」

第二十四話「神獣」

牛魔王を取り逃がしたものの無事に津上知佳を救出した四天王は、津上邦明を神殿の中心部にあたる本殿へと案内する。

本殿の中は、中央に広い空間があり、その空間を取り囲むように沢山の席が設けられていた。

高い天井を見上げると、青龍、白虎、玄武、朱雀と方位を守る神獣たちが描かれており、今にも動き出しそうにこちらを睨みつけている。

四天王から来賓席に座るよううながされた津上は、来賓席の椅子に座ると、思わず周りを見渡した。

おそらくここに座っている人たちは皆、神様なのだろう。

不思議な風貌をした人たちで埋め尽くされている来賓の中に、遠い昔に亡くなっているはずの親戚の姿を見つけた。

「あれは、母方の祖母の弟さんではなかったか?」

津上は、目を丸くする。

ほかにも、亡くなった親戚の人たちがいるのかもしれない。

では、いったい、ここで何が行われようとしているのだろうか?

自分は、この式典のためにこの不思議な世界に連れてこられたのだ。

津上はこれから行われる式典を、興味津々に待ち構えていた。

そのほかにも、気になることが二つほどある。

一つは妹の知佳のこと。

彼女は末期のがん患者だ。

妹は本当に大丈夫なのだろうか?

必死に周りを見渡したが、来賓席の中に妹の姿は見当たらなかった。

神様たちは、この式典で妹に何をさせる気なのだろう?

そして、もう一つは・・・。

「ちゃんと間に合ったのね」

突然、後ろの席から声をかけられた津上は、聞き覚えがある声に慌てて振り向く。

そこには、学生時代に亡くなった祖母が立っていた。

「まだ到着してないって聞いて、心配してたのよ。今日は祝いの席だから、ゆっくりしていってね」

唖然とする津上をよそに、祖母は自分の席へと戻っていく。

津上が祖母を追いかけようと席を立とうとした瞬間に、シンバルのような打楽器をたたく音が本殿に響き渡った。

ざわざわとしていた部屋の中が、一瞬にして静まり返る。

打楽器の音はどんどんと大きくなり、その奏でるリズムを速めていく。

いつの間にか中央の広い空間には、楽器を手に持ち、服を着た大きなヒキガエルが八匹姿を現していた。

つづく

 

次回のお話

連載小説 須佐の杜ラプソディ|第二十五話「方位を司るもの」

2019.12.08
 

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