連載小説 須佐の杜ラプソディ|第十二話「須佐神社ふたたび」

第十二話「須佐神社ふたたび」

新港町にある雑居ビルの事務所を出た町田探偵は、足早に駐車場へと歩いて行った。

この界隈は、ブリックモールという古い倉庫をリノベーションした昭和モダンな建物がある。

赤いハッチバックのポロに乗り込んだ町田は、アクセルを踏み込みながら、須佐神社へと車を走らせた。

秋山警部補は、須佐神社周辺を調べてみろと言っていた。

彼の直感は、いつも不思議と当たるのだ。

町田は、非科学的な捜査には否定的だったが、情報を流してくれた秋山の直感にのっかってみることにした。

須佐神社の駐車場に車を止めた町田は、神社へと登る石の階段の入り口に顔見知りの男性の姿を見つける。

男性は町田に気が付くと、挨拶代わりに軽く手を挙げた。

「お久しぶりです」

「古賀警部補、ご無沙汰してます。事件の捜査ですか?」

町田は何時ものポーカーフェイスで問いかける。

高級ブランドのスーツに身を包んだ古賀警部補は、苦笑いを浮かべながら問いに答えた。

「捜査一課の秋山警部補から連絡ありましたよ。貴方からこの件で問い合わせがあったって」

「こちらの情報も、秋山君に話してますから、問題ないでしょう。で、なにか進展はありましたか」

「動きありましたね」

古賀は話しながら階段を登りだす。

町田はその後ろをついて歩いた。

石段を登り終えると真正面に須佐神社の神殿が建てられている。

右手にはお守りが売られている作務所があり、左手には奥に続く坂道が続いていた。

坂道に数人の鑑識係の姿が見える。

町田は古賀に連れられて、坂道の途中にある石の祠に案内された。

祠には「高天宮」と書かれている。

古賀は祠の中を指さした。

「ここには石のご神体が祀られていたんですがね。神主さんから連絡があって・・・」

「連絡?空っぽのままですよね」

「いや、よく見て下さい。ほら、そこ」

古賀の言葉に、町田は目を見開く。

祠の中に、金色に輝く物体が一つ安置されていた。

「これ、誰が気づいたんです」

「いつも、この須佐神社の掃除をしているおばちゃんですよ。昨日までは何もなかったそうです。まぁ、最初に連絡を受けたときは子供の悪戯かと思ったんですがね。秋山警部補から聞いた、貴方の情報提供の内容を思い出して、慌てて鑑識を連れてきましたよ」

古賀は、白い手袋をはめ、祠の中に手を伸ばす。

町田は古賀が手に取った金色の物体に目を向けた。

「この金の指輪、ハートの形をしてますよね。貴方の依頼人の女性が話していた、消えた指輪じゃないですか」


 

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西洋文化の漂う、坂の街、長崎市。余命三ヶ月と宣告された秋山は、偶然訪れた神社で、「龍神の姿を見た」と語る女性と出会う。
片や1980年代、高度成長著しいバブル絶頂の大分市。中学二年生の卓也は、仲間たちに囲まれ、楽しい学校生活を過ごしていた。そんなある日、彼は幼馴染の部屋で衝撃的な場面を覗き見ることになる。
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やまの みき (著)