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新港町にある雑居ビルの事務所を出た町田探偵は、足早に駐車場へと歩いて行った。
この界隈は、ブリックモールという古い倉庫をリノベーションした昭和モダンな建物がある。
赤いハッチバックのポロに乗り込んだ町田は、アクセルを踏み込みながら、須佐神社へと車を走らせた。
秋山警部補は、須佐神社周辺を調べてみろと言っていた。
彼の直感は、いつも不思議と当たるのだ。
町田は、非科学的な捜査には否定的だったが、情報を流してくれた秋山の直感にのっかってみることにした。
須佐神社の駐車場に車を止めた町田は、神社へと登る石の階段の入り口に顔見知りの男性の姿を見つける。
男性は町田に気が付くと、挨拶代わりに軽く手を挙げた。
「お久しぶりです」
「古賀警部補、ご無沙汰してます。事件の捜査ですか?」
町田は何時ものポーカーフェイスで問いかける。
高級ブランドのスーツに身を包んだ古賀警部補は、苦笑いを浮かべながら問いに答えた。
「捜査一課の秋山警部補から連絡ありましたよ。貴方からこの件で問い合わせがあったって」
「こちらの情報も、秋山君に話してますから、問題ないでしょう。で、なにか進展はありましたか」
「動きありましたね」
古賀は話しながら階段を登りだす。
町田はその後ろをついて歩いた。
石段を登り終えると真正面に須佐神社の神殿が建てられている。
右手にはお守りが売られている作務所があり、左手には奥に続く坂道が続いていた。
坂道に数人の鑑識係の姿が見える。
町田は古賀に連れられて、坂道の途中にある石の祠に案内された。
祠には「高天宮」と書かれている。
古賀は祠の中を指さした。
「ここには石のご神体が祀られていたんですがね。神主さんから連絡があって・・・」
「連絡?空っぽのままですよね」
「いや、よく見て下さい。ほら、そこ」
古賀の言葉に、町田は目を見開く。
祠の中に、金色に輝く物体が一つ安置されていた。
「これ、誰が気づいたんです」
「いつも、この須佐神社の掃除をしているおばちゃんですよ。昨日までは何もなかったそうです。まぁ、最初に連絡を受けたときは子供の悪戯かと思ったんですがね。秋山警部補から聞いた、貴方の情報提供の内容を思い出して、慌てて鑑識を連れてきましたよ」
古賀は、白い手袋をはめ、祠の中に手を伸ばす。
町田は古賀が手に取った金色の物体に目を向けた。
「この金の指輪、ハートの形をしてますよね。貴方の依頼人の女性が話していた、消えた指輪じゃないですか」
つづく
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