連載小説 須佐の杜ラプソディ|第七話「桃団子」

目次

第七話「桃団子」

老人から「清明」と呼ばれていた男性は、歳の頃四十くらいか?

切れ長の目が印象的な、目鼻立ちが整った綺麗な顔立ちをしていた。

清明は、団子屋の店奥に声を掛けると、老人に椅子に座るよう指差した。

「久しぶりにお会いしたので、この清明が、お団子を馳走致しましょう」

「それは有難いが、わしは人探しをせにゃならん。逆にその間、この若者をちっとばかり預かってはもらえぬか?」

「なるほど。その女性を早く探し出さないと、天帝に大目玉を喰らわされるのですな」

「こりゃ、清明。天帝などと呼び捨てをするもんじゃない。誰かに聞かれでもしたら、どうするのじゃ」

老人は、慌てて周りを見渡す。

清明はにやりと口元を上げた。

「では、この清明が、お望み通り若者をお預かりいたしましょう。どうぞ、早くその女性とやらを、お探し下さい」

清明の返答に満足気に頷いた老人は、すぐさま参道を神社のような建物に向かって歩き出す。

あっという間に、その姿は人ごみの中に紛れてしまい、見えなくなってしまった。

店の中から、看板娘が桃色の串団子を運んでくる。

津上は清明に促され隣の椅子に腰かけると、串団子をご馳走になった。

「うぁ、これは・・・美味い」

串に刺さった団子を一つ頬張った津上は、驚きのあまり声を荒げた。

団子は、口の中に入れたとたん、桃の甘味と香りが広がり、とろけてしまいそうな感覚になる。

しかし、もっちりとした歯ごたえもちゃんとある。

こんな美味しい団子を、津上は今まで食べたことがなかった。

清明は、そんな驚く津上の顔を、何かを見透かすようにじっと見つめていた。

「そういう事か。貴方は、こちら側に呼ばれてきたんですな」

「こちら側に、呼ばれてきた?」

津上は、困惑したように顔を顰める。

「いや・・・招待された。と言う方が、分かりやすいかもしれんな」

清明は、一人納得するように頷いた。

つづく


次回のお話
あわせて読みたい
連載小説 須佐の杜ラプソディ|第八話「牛の掛け軸」 第八話「牛の掛け軸」 津上知佳は、二階にある和室の一室に一人腰を下ろしている。 部屋の広さは畳が八枚。 床の間には恐ろしい水牛が描かれた水墨画の掛け軸がかけられ...

 

  • URLをコピーしました!
無料でお知らせ掲示板に書き込む

イベントやお店、サークルのお知らせ掲示板へ無料で投稿できます。ぜひ投稿してみてください※無料で1投稿

詳しくはこちら>>フリープランのお知らせ

ライターになって地域を盛り上げる

佐世保エリアの最新情報や、させぼ通信でまだ取り上げてないお店やスポットの情報を書いてみませんか?

詳しくはこちら>>ライター募集

目次