連載小説 須佐の杜ラプソディ|第二十五話「方位を司るもの」

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第二十五話「方位を司るもの」

津上邦明は、本殿の大広間にある来賓席に座っている。

中央にある丸い空間を囲むように座席は設けられていた。

シンバルのような打楽器の音が鳴り響く中、中央の空間に烏帽子をかぶった八匹の大きなヒキガエルが楽器を手に持ち演奏を奏でている。

心地よい楽器の音色に耳を傾けていた津上は、来賓席に座る人ごみの中から、一人、また一人と亡くなったはずの親戚たちの姿を見つけ、目を丸くしていた。

カエルたちの奏でる演奏とともに、素っ裸の赤子が三人、整列しながら中央の空間へと入場してくる。

赤子たちは深々とお辞儀すると、華麗に踊りだした。

くるくると回りだしたかとおもうと、バク転を繰り返し披露する。

そのたびに来賓席からは、大きな歓声や拍手が送られていた。

突然、天井から大きな唸り声が聞こえてきた。

大きなヒキガエルたちは演奏をやめ、踊りを披露していた赤子たちはその動きを止めた。

津上は慌てて、天井を見上げる。

天井に描かれていた四体の神獣たちが見る見るうちに立体となり、本殿の中を飛び回りだした。

北方を守護する水神・玄武は、長い足を持つ亀に蛇が巻き付いた姿で下を見下ろしている。

南方を守護する神獣・朱雀は、鳳凰らしく赤い羽根を大きく広げ優雅に飛び回っている。

西方を守護する白虎は大きく口を開け鋭い牙をむき出しにし、東方の守護神である青龍は硝子玉のような冷たい目を光らせながらうねるようにとぐろを巻いていた。

「何なんだ、あの怪獣たちは?」

津上は、思わず声を上げる。

隣に座っていた狐のお面をかぶった青年が、津上に話しかけてきた。

「あれは方位を守る神獣たちですよ。今からあの神獣たちが、面白いものを見せてくれます」

お面をかぶった青年は、楽しそうに上空を指さす。

その瞬間、上空でとぐろを巻いていた青龍がとぐろを解き、白虎に襲い掛かった。

つづく

 

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