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捜査四日目
平成二十九年九月二十三日、AM8時31分
森吉祐子を護衛中の三村警部の目の前に、巨大な津波が現れた。
高さ50メートルは軽く超えているだろう。
三村は、テレビでもここまで巨大な津波を見たことがない。
大津波は、凄まじい水音を響かせながら、宇久島の目と鼻の先まで接近していた。
三村は祠の前で手を合わせていた祐子の手を掴む。
「ヤバい、津波に飲み込まれるぞ」
祐子は三村の声に驚きながらも、勝気な表情で大津波を睨みつける。
三村に手を引かれながら、祐子は高台を目指して走り出した。
部下の小島警部補も、一瞬遅れて三村たちを追う。
二人の刑事は祐子を守る為、素早く行動に打って出た。
防災危機管理局の豊川拓郎課長は、大津波を確認すると、ただ一人その場に立ち尽くした。
本当にこれは現実の出来事なんだろうか。
津波の高さはどんどん大きくなっていく。
刑事達は一斉に走り出したが、多分逃げても間に合わないだろう。
豊川の脳裏に、佐世保市に残してきた家族の顔が浮かぶ。
子供たちに向かって、にっこり微笑む妻の顔。
厳しく育ててくれた父の顔。
どんな時でも、自分の味方になってくれた母の顔。
そして四人の子供たちの無邪気な顔が、一人づつ浮かび上がってくる。
末っ子の男の子は、まだ先月生まれてきたばかりだ。
最後にもう一度だけ、この手で抱いてやりたかった。
そういえば、佐世保にも巨大な猿が出現し街を破壊している。
「みんな、何とか無事でいてくれたら良いが・・・」
豊川は、死を覚悟する。
その瞬間、宇久島の海に異変が起こった。
目の前の海が、噴水のように大噴射を起したのだ。
港から、突風が一気に押し寄せてくる。
風が運ぶ水しぶきで、豊川の体は一瞬のうちにずぶ濡れになる。
豊川は風に吹き飛ばされないように、両足に力を入れ必死に踏ん張っていた。
水しぶきが、無防備となった顔面を襲う。
顔中に、鋭い痛みが走る。
豊川はたまらず、顔を両手で覆い隠す。
その時、風が止まった。
津波が押し寄せる水の音が、再び豊川の耳に入りこんでくる。
今のは一体なんだったんだろう?
慌てて豊川は顔をあげる。
「なんだ、こりゃ」
豊川は信じられない光景を目にした。
宇久島を背に、甲冑を身に着けた巨大な魔人が、仁王立ちになっている。
まるで宇久島の盾になるように・・・。
巨大な魔人は、迫りくる大津波を鬼の形相で睨みつけながら、刀を手に、待ち構えていた。
その姿は体長40メートルはあるだろう。
巨大な大津波に、ひけをとらない。
「こりゃ、凄い。でも、こいつは何者なんだ・・・大魔神か? いや待てよ、二郎神・・・そうだ、二郎神だ。あの祠に祀られていた神様に違いない。あの少女の思いが通じて二郎神が現れたんだ」
豊川は一人納得する。
突然現れた巨大な魔人は、神の名にふさわしく体中に金色の光を纏っていた。
巨大な津波は、全てを飲み込んでしまおうと、宇久島に襲いかかる。
豊島は、たまらず後ろへ後退りする。
その瞬間、大津波を迎え討つべく二郎神が動いた。
手に持つ刀をゆっくりと振り上げる。
鬼の形相の二郎神が、宇久島に迫る巨大津波に、上段から切りかかった。
大津波はまるで悲鳴をあげるように、巨大な水しぶきを撒き散らす。
これぞ、まさに一刀両断。
真っ青な海は、津波もろとも真っ二つに割れてしまった。
長崎県警本部の緊急幹部会議に出席していた、長崎県警本部捜査一課の杉本新課長は、会議が終わると直ぐに自分のデスクへと戻る。
杉本は部下たちを派遣している、佐世保市の状況が気になって仕方がなかった。
緊急会議では、秋山の作戦を完全に封印した。
大川内家に近づく為に森吉祐子を宇久島へ雲隠れさせ、その上、森吉祐子を交渉の切り札として利用する。
そんな話を今の状況化で、上層部に伝えられる訳がない。
しかも秋山は、その森吉祐子に呪いじみた事をさせると言う。
もう、そんな事は摩訶不思議すぎて、口が裂けても言い出せるはずがない。
皆から馬鹿にされるのがオチだ。
緊急会議は何の解決策も出せぬまま終わってしまったが、それもまた仕方がない。
そもそもあんな怪物が現れてしまっては、事件の解決なんて二の次。
市民を無事に避難させることの方が、最優先なのだ。
しかもうちの上層部は、この巨大な猿の出現と佐世保市の事件が繋がっていることに気づいていない。
杉本はデスク横に急遽設置された、液晶テレビの電源を入れた。
テレビから、報道のヘリコプターに乗ったレポーターの興奮した声が聞こえてくる。
杉本はテレビに映し出された映像を見て、部下の西頭警部と思わず顔を見合わせた。
画面には、まるで「モーセの十戒」の様に、海が真っ二つに割れた映像が映し出されている。
その二つに割れた海と海の間を、体長四十メートルはあるだろう甲冑を身に着けた巨大な魔人が、ゆっくりと佐世保湾に向かって歩いていた。
ゆっくりと一歩づつ二郎神が歩くたびに、大きな地響きが鳴り響く。
ヘリコプターのマイクが、二郎神の大きな足音を拾っていた。
「何なんですか、あれは?」
西東は呆気に取られたように顔を歪める。
杉本は不機嫌そうに、部下の問いに答えた。
「全く訳がわからん。宇久島から出て来たってことは、アレが秋山の言っていた二郎神とかいう奴だろう。しかし、本当にそんな神がこの現実世界に現れるとは・・・」
「あれは、神様なんですか?」
「秋山がそう言ってたぞ。森吉祐子を宇久島にやって、孫悟空に対抗する神を召喚させると・・・。まぁ、まさかここまでデカイとは、流石の秋山も思ってなかっただろうがな」
「いや、しかしですね・・・」
「全く馬鹿みたいな話だが、実際に現れたんだから仕方がない。秋山の冗談も、こうなると現実として受け止めるしかないな」
杉本は顔を引きつらせながら、呆れたように言葉を吐き捨てる。
西東は困り果てたように呟いた。
「孫悟空に、二郎神か・・・もう、しちゃかちゃだな。こりゃ」
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