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捜査一日目
平成二十九年九月二十日、AM13:32
佐世保烏帽子岳署に戻った秋山警部補は、大島署長と別れると、マツダアテンザの運転席に乗り込む。
秋山は、烏帽子岳を名切方面に下ると、失踪事件で唯一の生存者である森吉祐子に面会する為、南佐世保総合病院に向かってアクセルを踏み込んだ。
助手席に座っている五反田刑事は、事件の資料を必死に読みあさっている。
この事件は、出口が見えない摩訶不思議な迷路に潜り込んでいた。
秋山は、一年ぶりに意識を取り戻した森吉祐子の状態が気になって仕方がなかった。
どれくらい回復しているのだろう?
この事件の解決に、唯一の生存者である彼女の証言は不可欠だ。
場合によっては、一気に解決の糸口を掴むことが出来るだろう。
その反面、この事件がそんな簡単に解決の方向に向かうのか?という、懸念もある。
こういう摩訶不思議な事件は、なかなか一筋縄ではいかないのだ。
秋山は、はやる気持ちを抑えながら車を走らせた。
目的地の南佐世保総合病院は、佐世保市で一番大きな総合病院だ。
場所は、佐世保市の繁華街の一等地に建設されていた。
約三百人の入院患者と、七百人の外来患者を日々抱えている。
その患者の中に、森吉祐子も含まれていた。
二人の刑事はまず、主治医の江原医師と対面した。
江原医師は五十代初めと、医師としてはちょうど円熟期を迎えた年齢で、病院の副院長の役職も兼務している。
温厚そうな顔に、鋭い目を持つやり手の医者だった。
秋山と五反田は五階の西病棟の通路で、江原医師と立ち話を始めた。
「森吉祐子さんの体調は、どんな感じなのでしょうか? もう普通に会話ができるんですか?」
「はい、大丈夫です。まだ長い眠りから覚めて三日しか経ってませんから無理はさせられませんが、普通に話せますよ」
「でも、一年間も病院のベッドで眠り続けてたんですよね。筋力も相当おちてるでしょう。歩行とかは大丈夫なんですか?」
秋山は、メモを取りながら人懐っこく問いかける。
江原医師は小さくうなずいた。
「今の医療は目まぐるしく進歩しています。一年間眠り続けている間もストレッチ運動などのリハビリを続けていたので、筋力は衰えてません」
「ということは、普通に歩けたりもするんですね」
「もちろんです。直ぐに、通常の生活にも戻れると思いますよ」
江原医師は、秋山の問いに自信満々に答えた。
秋山と五反田の姿を、看護師たちが不思議そうに横目で見ながら通り過ぎていく。
病室の通路には、沢山の看護師たちが忙しく行き来する姿が見られた。
「ただ、一つだけ残念なお知らせがあります」
江原医師は急に声のトーンを下げ、申し訳なさそうに話し始めた。
「残念なお知らせ?」
秋山のメモを取る手が止まる。
五反田は、興味津々に江原医師の次の言葉を待っていた。
「記憶の事なんですが・・・」
「記憶ですか?」
「そうです」
江原医師は静かにうなずく。
主治医の表情は、少しだけ険しくなった。
「彼女は、過去の記憶を一部思い出せずにいます」
「それは、記憶喪失のような感じなのですか?」
「そうです。森吉さんは、意識は戻ったのですが、事件当日の記憶だけ、全く覚えていないようなのです」
江原医師の言葉に、秋山の爽やかな表情は見る見る曇っていく。
その間に五反田が、慌てて話に割り込んできた。
「その失踪中の記憶は、どれくらいで戻るのでしょうか?」
「どれくらいでと言われましても・・・。戻るかもしれませんし、戻らないかもしれません」
「それじゃあ、捜査は全然先に進まないじゃないですか」
五反田は思わず声を荒げる。
江原医師は、慌てて五反田に大きな声を上げないよう注意した。
「嘘をついている可能性はありませんか?」
秋山は怪訝な表情を浮かべ、小声で話しかける。
江原医師は小さく首を横に振った。
「主治医の私でもそこまでは解りません。ただ一つ言える事は、忘れている可能性が高いという事です。一年ぶりに意識を取り戻しただけでも、奇跡のようなものですから」
秋山は主治医の言葉に納得したように頷くと、隣に立っていた五反田の耳元でそっと囁いた。
「だから、嫌な予感がプンプンするって言っただろう」
五反田は、驚いたように大きな目を丸くした。
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