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津上知佳の病室を退出した町田探偵と古賀警部補は、総合病院の正門を出ると、病院の近くに流れている佐世保川と佐世保公園をつなぐアルバカーキ橋へと向かう。
緩やかに流れる川を、橋の上から覗き込みながら、二人は先ほど病室で起こった摩訶不思議な現象について話し合っていた。
「これ、上司になんて説明すれば良いんですかね」
古賀は、顔を顰めながら困惑気味に町田に話しかける。
町田は、相変わらずポーカーフェイスのまま、古賀の方へ視線を向けた。
「ありのまま話すしかないでしょうね。救いなのは一般人の僕が目撃者として名を連ねてますから、隠ぺいしたと疑われないことです」
「しかし、これはちょっと。こんな話、誰も信じてくれませんよね」
「まぁ、常識人には伝わらないでしょうね。実際、僕もこの目で指輪が消える瞬間を目撃してるのに、未だに信じられないですから」
「誰も信じないでしょう」
「いや、秋山警部補なら、信じますよ」
「あぁ。彼は、ほら、直感型というか、ちょっと変わってますから」
古賀は苦笑いを浮かべる。
町田は、小さなため息をついた。
「今、秋山君は、佐世保市の女子高生失踪事件の捜査に駆り出されて、佐世保市に派遣されてるでしょう。あの有名な神隠し事件。そういう事なんです。この事件も、一般常識では考えられない、変てこりんな事件なんですよ」
「オカルト絡みってことですか・・・。町田さんは、超常現象を信じますか?」
「いや、全く。科学で証明できるものしか信じませんね」
「じゃあ、指輪が消えてしまったことは、どう説明するんですか?」
古賀は、鋭い目つきで町田を睨みつける。
町田は、日に焼けた古賀の整った顔を見つめながら、問いに答えた。
「だから、僕に聞いても何も出てきませんって。秋山警部補に相談してみたらどうでしょう。彼は直感で、須佐神社周辺を調べてみろと話していました。貴方が彼の直感が信用できるかは置いといて、相談してみるのは有りだと思いますけどね」
「餅は餅屋という事ですか」
「そういうことです」
町田は、表情を変えずに優良パーキングへと歩き出す。
古賀も町田の後に続いた。
いったい、指輪はどこに消えたのか?
よくよく考えてみると、須佐神社に祀られていた祠の中のご神体の石も消えてしまっているのだ。
町田は、親友の秋山警部補の顔を思い浮かべながら、スマートフォンを手に取った。
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